"肥満の人の友達や家族は肥満になりやすい
またこの社会的ネットワークにおける距離は、隣人など地理的な距離とは、肥満に対して違った影響を持つことが示されている。同時にこのピア効果は、同性間でより強い影響を持ち、また友人同士、兄弟・姉妹同士、夫婦により影響の度合いも異なる。
さらに重要な点として、この肥満の連鎖は「似たもの同士が友人になる」という逆向きの影響も考慮して分析されており、環境的要因の共有から生じる肥満の同時発生という仮説も、「ピア効果が地理的な結びつきに依存しない」という実証結果から考えにくい。そのため、肥満の連鎖は、行動の変化を通じて、またそれ以上に肥満であることを受け入れる心理的な規範の変化を通じて、個人から個人の間へと伝播する可能性があるとこの論文の筆者は述べている。
日本では米国に比べ人口に占める肥満の割合は低いため、この問題の社会的重要性はそれほどピンと来ないかもしれない。だが、このようなピア効果は、喫煙行動でも確認されている。
以上は、社会的ネットワークを通じて「行動」が伝播する例であるが、感染症の場合にはより直接的に人対人(もしくは人対動物)での接触を通じてウィルスや細菌による感染が伝播する。この場合、社会的ネットワークとは違い、接触者同士の地理的ネットワークが意味を持つ。この感染拡大を規定する際に重要となるのが、ネットワークの性質である。
最も単純な人と人との接触パターンは「無作為ミクシング(random mixing)」とよばれるもので、この仮定の下ではいかなる2人も同じ確率で接触すると仮定している。この仮定の下では、あなたは自分の家族であるAさんとも、地球の裏側に住んでいるBさんとも同じ確率で接触することを意味する。しかしこの例でわかるように、実際には接触パターンは相手ごとに違いがあり、そのパターンを的確にとらえることが感染症対策にとっても重要となるわけだ。
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